九七式戦闘機

二式複座戦闘機屠龍は海軍の月光と同様、独メッサーシュミットBf110の活躍に触発されて開発した双発戦闘機である。しかし、戦況をよく観察すれば相手は二線級の戦闘機ばかりで初めから勝負にならなかったことを理解すべきだった。逆に言えば、独国の宣伝がうまかったということだろう。

二式複座戦闘機(屠龍)甲型諸元

二式複座戦闘機(屠龍)

エンジン空冷14気筒 三菱ハ102(離昇馬力1,080HP/2,700r.p.m 公称馬力1,055HP/2,800m)
最大速度547km/h
航続距離1,500km
全高3.7m
全幅15.07m
全長11.00m
主翼面積32.2㎡
自重4,000kg
全備重量5,270kg
上昇時間5,000mまで7分
実用上昇限度10,000m
武装機首12.7mm機関銃(ホ103)×2、胴体下面20mm機関砲(ホ3)×1、後部旋回7.92mm機関銃(九八式旋回機関銃)

二式複座戦闘機(屠龍) こぼれ話

ヨーロッパでは一種の流行病のように各国が作ったものに、双発戦闘機がある。大馬力エンジンが手に入らなかったためにエンジンを2基搭載して速度向上を図り、機首に機銃や機関砲を集中装備でき、燃料も多く積めるので長距離の爆撃機援護が可能となる夢のような万能戦闘機が実現するはずだった。事実、ヨーロッパで戦争が勃発すると、ドイツ空軍のBf110双発戦闘機はポーランド空軍やフランス空軍の戦闘機を圧倒的な強さで排除した。この大活躍に刺激されて開発されたのが二式複戦(屠龍)である。

双発戦闘機の実力は歴史が証明しているように、成功作と言えるのはアメリカ陸軍のロッキードP38ライトニングのみである。(イギリス空軍のデハビラト・モスキートは純然たる戦闘機ではないので成功作からは除かれる。)Bf110はバトル・オブ・ブリテンにおいて爆撃機を護衛して英国上空へ侵攻したが、運動性の良い単発戦闘機の相手とはなり得なかった。あまりのふがいなさにゲーリングはBf110にはメッサーシュミットBf109が護衛に付け!という変な命令を出すほどだった。こうして、双発戦闘機は通常の対戦闘機戦闘のリングから退場しなければならなかった。

双発戦闘機の多くは爆撃機の迎撃戦闘へと転用された。長距離援護ができる戦闘機の随伴が無かったときは昼間でも出撃できたが、護衛戦闘機が随伴してくると双発戦闘機は夜間爆撃してくる爆撃機の迎撃へと再度転用された。夜間戦闘機の誕生である。屠龍も海軍の月光と同じく、斜め銃を搭載して夜間戦闘機となり命脈をつないだ。