四式戦闘機(疾風)

四式戦闘機疾風は、大東亜決戦機として重点生産された機体で、零式艦上戦闘機、一式戦闘機隼についで約3,500機生産された。

四式戦闘機(疾風)一型甲諸元

四式戦闘機(疾風)

エンジン空冷18気筒 中島ハ45-21 (離昇馬力2,000HP/3,000r.p.m 公称馬力1,620HP/6,100m)
最大速度624km/h(6,500m)
航続距離1,600km
全高3.38m
全幅11.24m
全長9.92m
主翼面積21㎡
自重2,680kg
全備重量3,890kg
上昇時間5,000mまで6分26秒
実用上昇限度12,400m
武装機首12.7mm機関銃(ホ103)×2(携行弾数各350発)、翼内20mm機関砲(ホ3)×2(携行弾数各150発)
爆弾30~250kg×2

四式戦闘機(疾風) こぼれ話

二式単戦(鍾馗)の2,000馬力級エンジンハ45の換装型(三型)として計画されていたものを改めて一から設計し直したのが四式戦(疾風)である。基本的な機体レイアウトは九七戦、一式戦(隼)、二式単戦(鍾馗)の流れをくむ小山流デザインである。平面形は一式戦(隼)に酷似しているが、一式戦(隼)や二式単戦(鍾馗)に比べて大量生産に向くような作りやすい構造をしている。前部胴体が主翼と一体になって作られ、後部胴体と分割される作り方は九七戦以来中島飛行機戦闘機の伝統とも言える制作方法となっていたが、前部胴体と主翼の結合に工数がかかりすぎていたのを胴体の円框を補強して主翼とボルトで永久結合することにより工数の削減に寄与している。また、機関砲などの点検整備孔は強度上できるだけ小さい方が望ましいが、戦場での整備を考えると開口部は大きい方がやりやすく整備員にとってはありがたい。そこで、カバーの強度を上げて締め付けネジの本数を減らす方法をとった。

寸法的に似通った一式戦(隼)と四式戦(疾風)を比べると出力の大きなエンジンを搭載する機体はこうも違うのかが見えてくる。隼の全幅=10.84m、疾風の全幅=11.24m、同様に全長は8.92mに対して9.92m、全高は3.6mに対して3.38m、主翼面積は21.4㎡に対して21㎡、わずかに四式戦(疾風)のほうが一式戦(隼)より大きいがほぼ同サイズの機体と見て良いだろう。ところが自重を比べると、隼=1,910kgで疾風=2,680kgと770kgも重くなっている。エンジンは隼搭載のハ115で590kg、疾風搭載のハ45で835kgだから245kgの増加でしかない。エンジン重量増加分を差し引いた自重増加分は525kgだが12.7mm機関砲2門と12.7mm機関砲2門+20mm機関砲2門と武装での重量増加分もこれに含まれるが、機関砲と弾丸を合わせても100kg少々と考えると約400kgが構造材料の増加分となる。この差が1,000馬力級エンジン装備の機体と2,000馬力級エンジン装備の機体との違いである。このことだけを見ても、戦闘機の高性能化は翼面荷重の増加が必然であると言え、軽戦か重戦かでもめていた軍部の頭の固さにはあきれるばかりである。

四式戦(疾風)の各型には次のようなものがある。
キ84一型甲対戦闘機用で最も多く製作された。
キ84一型乙対爆撃機用、機首のホ103に代えてホ5を装備した。
キ84一型丙対B29用、機首にホ5、翼内にホ155(30mm)に換装。試作2機のみ
キ84一型改エンジンをハ345(ハ45四四型の仮称)に換装、主翼面積22.5㎡、プロペラ直径を3.5mにしたもの
キ84二型生産途中から翼端形状を変えたもので、X、Y、W、V装備がある。
キ84三型排気タービン付きのハ211またはハ219(2,400馬力)の換装。計画のみ
キ84四型エンジンをハ345に換装。計画のみ
キ106キ84の木製化。少数機のみ完成
キ113キ84の鋼製化。試作1号機完成直前で終戦
キ116エンジンをハ112-Ⅱに換装。満州飛行機で試作機1機完成、テスト中に終戦
キ117エンジンをハ219(2,400馬力)に換装。設計のみ
キ84複座練習機正規に中島で設計されたものではなく、現地部隊の要請で改造されたものと思われる。