艦上攻撃機(天山)
艦上攻撃機(天山)は、搭載エンジンの選定に失敗し、実戦配備が遅れた。中島飛行機が得意とする三座の艦上攻撃機は九七式、天山と続き、艦上偵察機の彩雲へと受け継がれる。
艦上攻撃機(天山)諸元
天山一一型 | 天山一二型甲 | |
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エンジン | 空冷14気筒 中島護一一型(離昇馬力1,870HP/2,600r.p.m 公称馬力1,750HP/1,400m) | 空冷14気筒 三菱火星二五型(離昇馬力1,850HP/2,600r.p.m 公称馬力1,540HP/5,500m) |
最大速度 | 464.9km/h(高度4,800m) | 481.5km/h(高度4,000m) |
航続距離 | 1,460km(正規)3,447km(過荷) | 1,746km(正規)3,045km(過荷) |
全幅 | 14.894m(主翼折畳時7.1935m) | |
全長 | 10.865m | |
全高 | 3.80m | 3.82m |
主翼面積 | 37.202㎡ | |
自重 | 3,223kg | 3,083kg |
全備重量 | 5,200kg(正規)5,650kg(過荷) | |
実用上昇限度 | 8,650m | 9,040m |
武装 | 7.7mm旋回機銃×2(後上方・後下方) | 13mm旋回機銃×1(後上方)、7.92mm旋回機銃×1(後下方) |
爆弾 | 60kg×6または250kg×2または800kgまたは800kg航空魚雷×1 | |
乗員 | 3名 |
艦上攻撃機(天山) こぼれ話
艦上攻撃機(天山)の外形的な特徴は太い胴体と前に傾いたように見える垂直尾翼だろう。空母のエレベーターギリギリまで全長を伸ばし、三点姿勢の状態で垂直尾翼後縁を垂直にしたため特徴的な垂直尾翼となった。この手法は後の艦上偵察機(彩雲)にも受け継がれ、胴体の太さは別にして横からのシルエットは似ている。太い胴体は直径1,380mmの護エンジンに合わせた結果で、雷電に次いで幅広の機体となっている。太い胴体だが爆弾倉はなく爆弾や魚雷は胴体下に懸吊する。九七艦攻より80km/h以上最高速度を速くする要求がなされたので、5トン以上の機体にかかわらず翼面積は九七艦攻よりわずかに小さい37.202㎡、翼幅もわずかに短い14.894mとなっている。この高い翼面荷重に対して、艦上攻撃機(天山)にはファウラーフラップを採用して発艦時に大きな揚力を得ることができた。艦上攻撃機(天山)の搭載空母は中大型空母を予定していたが、発艦性能に不安があったため、RATO(離陸補助用ロケット)を使用することも検討されたものの、RATOが完成したときには天山を搭載する空母はすでに無かった。
開発スタート時に中島設計陣は自社の護エンジンを強く押し、海軍にも認められて正式装備となったが、失敗作であることが判明し、三菱の火星エンジンに換装されている。護エンジン自体も十三試陸上攻撃機試製深山に搭載されたのみで、生産数も約200基と少ない。