零式水上観測機

もともと水上観測機という機種は、艦隊決戦の際に味方の軍艦が放った砲弾が敵艦のどのあたりに飛んでいるかを観測し、逐一弾着修正の情報を送る任務を帯びた飛行機である。敵艦隊へ密着するところから敵戦闘機の邀撃を受ける可能性が高いために、対戦闘機戦闘能力も求められる難しい機体である。零式水上観測機は格闘戦に優れた能力を発揮し、相手戦闘機からは「ピート(零式水上観測機の連合国コードネーム)には気をつけろ」と言わしめた優秀機である。

零式水上観測機諸元

零式水上観測機

エンジン空冷14気筒 三菱瑞星13型(離昇馬力1,080HP/2,700r.p.m 公称馬力950HP/6,000m)
最大速度370km/h(3,000m)
航続距離1,070km
全幅11.00m
全長9.50m
全高4.00m
主翼面積29.54㎡
自重1,928kg
全備重量2,550kg
上昇時間5,000mまで9分36秒
実用上昇限度9,440m
武装7.7mm機銃×3(機首×2、後方旋回×1)30kg爆弾×2
乗員2名

零式水上観測機 こぼれ話

水上観測機という機種は、艦隊同士の砲撃戦において味方の弾着を観測し、適宜位置情報を艦隊へ知らせる役割を持つ。従ってより敵艦隊の近くへ進出し、敵迎撃機の攻撃をかわしつつ弾着確認をしなければならないので、日本海軍においては、第一に上昇性能、次いで格闘戦性能、三番目に速度性能が要求された。

昭和10年2月に海軍から出された要求に、愛知航空機、川西航空機、三菱重工業の3社が競争試作に応じた。愛知、川西は水上機を多く手がけておりお手の物だが、三菱は全備重量6トンの飛行艇を1機作成しただけだった。ところが、採用されたのは三菱案だった。要求の2番目に掲げられた格闘戦性能が他の2社を引き離したことが採用の決定打となった。試作機選定において96艦戦との模擬空戦があり、当時世界最高と言われた96艦戦を相手に全く引けを取らなかったという。

この零式水上観測機で採用された機構で、その後の機体に標準装備されたのが、スロットル・レバーに連結された機銃把柄である。それまでは機銃把柄は操縦桿に付いていたが、敵を追い詰める際は小刻みに操縦桿を操作するため、射撃の際に微妙に機体姿勢が変わり命中率が落ちるという欠点を解消した仕組みである。