局地戦闘機(紫電)

水上機から陸上機に転用される世界に類を見ない奇策で誕生した紫電だが、設計期間を短縮するために強風から引き継いだ機体各部にはやはり無理があった。特に、引き込み式脚の収納に脚柱を一旦縮めてから引き込む機構は故障・事故多発の原因となる。

紫電一一型甲諸元

局地戦闘機(紫電)

エンジン空冷18気筒 中島誉二一型(離昇馬力2,000HP/3,000r.p.m 公称馬力1,620HP/6,100m)
最大速度584km/h(5,900m)
航続距離1,430km
全幅12.00m
全長8.89m
全高4.058m
主翼面積23.50㎡
自重2,897kg
全備重量3,900kg
上昇時間6,000mまで5分50秒
実用上昇限度12,500m
武装翼内20mm機銃×2、翼下20mm機銃×2(携行弾数各100発)
爆弾60kg×2

局地戦闘機(紫電) こぼれ話

紫電の大きな特徴であり大きな弱点であった二段引き込み式の脚は水上機であったがための負の遺産である。一般的に水上機はフロートやプロペラが起こす波を被らないように主翼は中翼にする場合がある。水上戦闘機(強風)も中翼で設計され、紫電への設計変更も極力少なくするというコンセプトからそのまま受け継がれた。水上戦闘機(強風)を陸上機にするには引き込み脚を装備しなくてはならないが、主脚の設計には障壁がいくつもあった。水上戦闘機(強風)にはもともと20mm機銃を翼内に装備していたので、それより内側に脚を引き込むようにしなければ主翼を大幅に変更しなければならない。機体が水平姿勢で荷重が一杯かかった状態での脚の長さはプロペラ先端と地面のクリアランスが最低20cmは必要なことから、385mmも脚を縮めないと収納できないことが判明した。脚担当大沼技師は萱場製作所の鈴木課長と協力して前代未聞の二段引き込み方式の主脚を設計したが、脚柱のロックがはずれなかったり、脚柱が伸びきらなかったりして着陸時の故障が頻発した。この複雑な脚機構が紫電を低翼化する最大の原因となる。