陸軍戦闘機(キ83)
遠距離戦闘機として計画されたキ83は、百式司令部偵察機のデザインの流れをくみ、いかにも高性能を感じさせる機体である。
陸軍戦闘機(キ83)諸元
エンジン | 空冷18気筒 三菱ハ211ル×2(離昇馬力2,200HP/2,900r.p.m 公称馬力1,720HP/9,000m) |
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最大速度 | 704km/h(高度10,000m) |
航続距離 | 2,800km |
全幅 | 15.50m |
全長 | 12.50m |
全高 | 4.60m |
主翼面積 | 33.71㎡ |
自重 | 5,980kg |
全備重量 | 8,930kg |
上昇時間 | 10,000mまで10分30秒 |
実用上昇限度 | 12,660m |
武装 | 30mm機関砲×2(機首)、20mm機関砲×2(機首) |
爆弾 | 50kg×2 |
陸軍戦闘機(キ83) こぼれ話
中国大陸で奥地への爆撃が行われだすと、爆撃機に随伴して援護できる戦闘機がなかったため、相当数の爆撃機が被害を受け、第一線から長距離援護戦闘機の要望が高まった。陸海軍とも切実な要望だったので陸海軍共同開発の形でキ83の開発指示が三菱へ出された。しかし、陸軍から司令部偵察機(百式司令部偵察機の後継機として)、地上襲撃機への転用が要求されたので単座から複座へ変更しなければならず、大幅な遅れの原因となった。血筋の良い機体は様々な用途への転用が可能だと考えてしまいがちだが、真の万能機はあり得ない。ある特定の目的を持って開発された機体は他より秀でる可能性が高いが、八方美人的に開発されたものは万能機ではなく凡庸機である場合がほとんどである。種々のファクターの総合点が同一だとすると平均点ばかりの機体より抜きんでた要素を持った機体のほうが強い場合がある。日本の兵器開発、特に飛行機に関しては軍部の定見のなさが最大のネックだったことに間違いない。
キ83はハ211ルという排気タービン付きのエンジンを搭載し、高空性能が期待された。社内テスト飛行でも高度8,000mにおいて686.2km/hの高速を出し、排気タービンが調子よければ所定の性能を発揮することが確認され、キ83は遠距離戦闘機、高々度防空戦闘機、司令部偵察機、襲撃機の4部門で重点機種に選定された。しかし、司令部偵察機、襲撃機としては実機の完成はない。戦後、アメリカ軍に接収されアメリカ本土に渡ったキ83は調査され、整備された後アメリカ軍のハイオクタン(オクタン価120)燃料を入れて飛行し、762km/hを記録したという。