陸軍戦闘機 キ94

キ94は立川飛行機が初めて手がけた戦闘機だったが、機体デザインを全面的にやり直す失敗をしたため、計画が大幅に遅れた。しかし、やり直した設計自体はオーソドックスで実用化の確率は中島飛行機のキ87より高かったと思われる。

陸軍戦闘機 キ94諸元

陸軍戦闘機 キ94-Ⅰ 陸軍戦闘機 キ94-Ⅱ

キ94-Ⅰキ94-Ⅱ
エンジン空冷18気筒 三菱ハ211ル×2(離昇馬力2,200HP/2,900r.p.m 公称馬力1,750HP/10,500m)空冷18気筒 中島ハ219ル(離昇馬力2,450HP/2,800r.p.m 公称馬力2,100HP/12,000m)
最大速度780km/h(高度10,000m)712km/h(高度12,000m)
全幅15.0m14.0m
全長13.5m14.0m
全高3.85m4.65m
主翼面積37.0㎡28.0㎡
自重6,500kg4,860kg
全備重量8,800~9,400kg6,550kg
上昇時間10,000mまで9分56秒10,000mまで16分20秒
実用上昇限度14,000m14,100m
武装37mm機関砲(主翼)×2、30mm機関砲×2(主翼)30mm機関砲(主翼)×2、20mm機関砲×2(主翼)
爆弾50kg×2500kg×1

陸軍戦闘機 キ94 こぼれ話

中島のキ87とともに立川へ発注されたキ94は当初双発串形という奇抜な機体レイアウトで出発したが、全面的に設計を改めてオーソドックスな形式の機体として再出発した。立川飛行機は練習機や輸送機の生産あるいは他社の転換生産を行ってきた会社で、このキ94の受注は初めての戦闘機であった。立川にキ94が発注された経緯は、高々度戦闘機であるため与圧コクピットがかかせないので、キ74(高々度遠距離偵察爆撃機)などで機体の気密構造に経験の深い立川が選ばれた。設計主務は長谷川技師(のちトヨタ自動車でパブリカなど名車のチーフデザイナーとなる)で全社を挙げての取り組みとなったが、立川が最初に提案した機体は、排気ガスタービン装備のエンジン2基を中央胴体の前後に配置(串形)し、それぞれで牽引式、推進式プロペラを駆動した。主翼からは細いビームを後ろに伸ばし垂直尾翼は各ビーム後端に配し、水平尾翼はビーム後端をつなぐ形となった。モックアップ(実大模型)ができた時点で問題点が浮かび上がってきた。ひとつは、エンジンの装備方法と冷却が実用的でないこと、次に、操縦席後ろにプロペラがあることによりパイロットの脱出が困難なこと、そして、三車輪式に慣れていないことが問題として挙げられた。1番目の問題は別にして2番目、3番目はなにもモックアップを作ってから問題にする事項ではなく、戦局が急迫している時期に設計の前面やり直しは非常に悔やまれる。

キ94-Ⅱは、搭載エンジンをハ211ルからハ219ルに換えてオーソドックスな形式になった。高々度性能を上げるためにいくつかの工夫がなされている。お得意の気密室構造は、機体構造とは別に気密室を作り組み立て時に取り付ける形式にし、与圧もあまりかけずに酸素ボンベを併用して被弾時の空気漏れに備えた。高空10,000mに上がると外気はマイナス40度にもなるので、与圧空気を風防ガラスに吹き付け曇り止めとなるようにした。そして、キ94の最大の特長は排気ガスタービンの艤装方法で、キ87が機首付近の側面に装備(海軍の雷電も同様の位置)したのに対し、キ94では排気ガスタービンを胴体下、ちょうど操縦席の下あたりにもってきた。エンジン付近に配置する方式との違いは、複雑な配管が不要である、エンジンから3.7mの距離にあるためいくらかでも排気温度が下がりタービンの加熱を防ぐことができる、といったメリットがあり、アメリカのP47サンダーボルトもこの形式(P47はキ94よりさらに後ろへタービンを配している)を採用している。主翼はアスペクト比を大きくとり高空性能に寄与しているが、なによりこの機体の平面形を美しく見せている要因の一つとして声を大にしたい。

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