軽戦か重戦か

軽戦とは、あるいは重戦とはこういうスペックの戦闘機を指す、という明確な定義はどこにもない。というより、日本独特の考えである。

一般的は、軽戦は軽武装で機体重量が軽く、運動性の良い、主に水平面での格闘戦を重視した戦闘機というイメージだ。対する重戦は、重武装で強力なエンジンを搭載しているため機体重量が重く、したがって直線的な戦闘を得意とし、主に垂直面での一撃離脱戦法を得意とする戦闘機だ。

戦闘機への要求

ここで戦闘機とはどういう機体であるべきか考えてみよう。

戦闘機には様々な任務が待っている。爆撃機などを援護して敵邀撃機を排除する、逆に敵爆撃機、攻撃機を迎え撃つ邀撃戦闘、敵地へ侵攻して敵航空兵力(主に敵戦闘機)を撃滅し、友軍の爆撃などを容易にするなどが挙げられる。したがって、戦闘機は敵戦闘機、敵爆撃機、敵攻撃機と渡り合えなくてはならないのだ。対戦闘機戦闘は運動性が良くなければ勝てないし、スピードも要求される。対爆撃機戦闘は運動性、スピードはさほど必要ないが、素早く邀撃高度まで到達できる上昇力、一撃で撃墜できる重火器が必要となる。

相反するファクター

要求される性能を一つずつ達成しようとすれば簡単である。小さい半径でクルクル回る機体が欲しいなら、小さくて軽いものを作れば良い。スピードの速い戦闘機を目指すなら、小さい機体に強馬力のエンジンを搭載すれば良い。爆撃機に随伴して敵地深く侵攻するには燃料をたくさん積める機体に燃費の良いエンジンを搭載すれば良い。上昇率を高めようとすれば、機体重量に比してエンジン出力を大きくし(余剰馬力が大きいという)、揚抗比の良い主翼を与えれば良い。

しかしながら、飛行機の要求性能というものは一つの項目だけではない。たとえば、最大速度は600km/h以上、実用上昇限度は11,000m、上昇時間は6,000mまで5分以内、航続距離は巡航2時間+戦闘30分あるいは2,000km、武装は20mm×2、12.7mm×2、爆弾は60kg×2、となる。

ここで、格闘性能の良い機体を作ろうとして、機体を軽く設計したいのだが、大馬力エンジン、重武装、大航続力を要求されると意に反して重量はどんどん増すばかりとなり、軽快にひらりひらりと戦える飛行機ではなくなる。

歴史が白黒つけた

より速く、より強く、より遠くを追求していくと、必然的に戦闘機は重戦へと進化していき、重戦の運動特性や武装の特長を活かした戦法を編み出した。機械に人間が合わせたのである。

この選択が間違っていないことは歴史が物語っている。さしもの万能戦闘機零戦も、アメリカが繰り出すP-51ムスタングやF6Fヘルキャットに相当な苦戦を強いられた。

それに引き替え、日本陸軍は軽戦から重戦への切り替えに軍上層部が理解を示し、一式戦隼に続いて二式単戦鍾馗、三式戦飛燕、四式戦疾風と繋がる重戦闘機を作った。最初は不安だった上層部も、鍾馗をメッサーシュミットBf109と対峙させたとき案外運動性が良かったことも重戦への転換の一因となった。

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